1.仕入税額控除の要件

仕入れ税額控除の適用を受けるには、一定の事項を記載した帳簿及び適格請求書などの請求書等の保存が必要です。

課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間保存する必要があります。
免税事業者や消費者など、適格請求書発行事業者以外の者から行った課税仕入れは、原則として仕入税額控除の適用を受ける
ことができません。


ただし、一定の期間は、一定の要件の下、仕入税額相当額の一定割合を、仕入税額として控除できる経過措置があります。

(出典:国税庁「適格請求書等保存方式の概要 -インボイス制度の理解のために-」)

2.保存が必要となる請求書等の範囲


仕入税額控除の要件として保存が必要となる請求書等には、以下のものが含まれます。

売手が交付する適格請求書又は適格簡易請求書
買手が作成する仕入明細書等
(適格請求書の記載事項が記載されており、相手方の確認を受けたものに限ります。)
卸売市場において委託を受けて卸売の業務として行われる生鮮食料品等の譲渡及び農業協同組合等が委託を受けて行う農林水産物の譲渡について、受託者から交付を受ける一定の書類
⑴から⑶の書類に係る電磁的記録

3.帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合


適格請求書などの請求書等の交付を受けることが困難な以下の取引は、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。

適格請求書の交付義務が免除される以下の取引
①公共交通機関である船舶、バス又は鉄道による旅客の運送(3万円未満のものに限ります。)
④自動販売機・自動サービス機により行われる課税資産の譲渡等(3万円未満のものに限ります。)
⑤郵便切手を対価とする郵便サービス(郵便ポストに差し出されたものに限ります。)
適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます。)を満たす入場券等が、使用の際に回収される取引
古物営業、質屋又は宅地建物取引業を営む事業者が適格請求書発行事業者でない者から、古物、質物又は建物を当該事業者の棚卸資産として取得する取引
適格請求書発行事業者でない者から再生資源又は再生部品を棚卸資産として購入する取引
従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当等に係る課税仕入れ

(出典:国税庁「適格請求書等保存方式の概要 -インボイス制度の理解のために-」)

4.簡易課税制度を適用している場合の保存要件

 簡易課税制度を適用している場合、課税売上高から納付する消費税額を計算することから、適格請求書などの請求書等の保存は、仕入税額控除の要件とはなりません。

5.免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置


 適格請求書等保存方式の開始後は、免税事業者や消費者など、適格請求書発行事業者以外の者(以下「免税事業者等」といいます。)から行った課税仕入れは、原則として仕入税額控除の適用を受けることができません

 ただし、制度開始後6年間は、免税事業者等からの課税仕入れについても、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額として控除できる経過措置が設けられています。

(出典:国税庁「適格請求書等保存方式の概要 -インボイス制度の理解のために-」)

6.税額計算の方法等

令和5年10月1日以降の売上税額及び仕入税額の計算は、次の①又は②を選択することができます。

 ① 適格請求書に記載のある消費税額等を積み上げて計算する「積上げ計算」

 ② 適用税率ごとの取引総額を割り戻して計算する「割戻し計算」

(出典:国税庁「適格請求書方式の概要 -インボイス制度の理解のために-」)

7.その他の留意点

会計システムの対応

 会計システムへの仕入れ入力の際、「10%」「軽減税率8%」の税率別の入力のほか、「適格請求書発行事業者でない事業者からの仕入れ」を分けて入力する必要があります。

適格請求書がない場合の対応

 適格請求書がなく帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められるケースは限定されており(上記3参照)、それ以外のケースでは、仕入税額控除を受けるためにインボイスを受け取る必要があります。

 ※ 現行制度では自動販売機利用、回収されてしまう入場券等、請求しても請求書の交付が受けられなかった場合などは3万円以上の場合も帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められていましたが、令和5年10月1日以降はこの取り扱いは廃止となります。

受け取った適格請求書の内容に誤りがある場合

 現行の区分記載請求書等保存方式では、「軽減税率対象品目である旨」や「税率区分ごとの合計額」の記載漏れがある場合、仕入れ側がその事実に基づき追記を行うことができました。

 しかし、インボイス制度においてはそのような追記が認められていません。受け取った適格請求書の内容が間違っている場合は、取引先に修正した適格請求書の交付を求める必要があります

取引先が適格請求書発行事業者であるかどうかの確認

 令和5年10月1日以降、原則として「適格請求書発行事業者」からの仕入れしか仕入税額控除の対象となりません。そのため、免税事業者や適格請求書(インボイス)の発行に対応していない課税事業者からの仕入れについては仕入税額控除ができなくなります
 このような事業者からの仕入れがある場合、これまでと同様の取引を継続した場合は消費税の納税額が増えることとなるため、その事業者が適格請求書発行事業者の登録を行うのか、そうでなければ引き続きその事業者からの仕入れを続けるのかなど、事前に検討する必要があります。

 適格請求書発行事業者の名称および登録番号等は、国税庁のウェブサイト「適格請求書発行事業者公表サイト」にて公表されます。法人番号のように、誰でも閲覧できますので、取引先が適格請求書発行事業者かどうか確認しましょう。

 なお、TKCのFXシリーズでは、取引先マスターに登録番号を自動的にセットし、取引先が適格請求書発行事業者かどうかを検証できるようになる予定です。